平成31年度山形県公立高校入試問題難易度

◎平成31年度の山形県公立高校の入試問題についての雑感

 今年の入試問題は国語が異常に易しく、数学も昨年よりも易しくなり、英語は平成29年以前の問題よりも易しいです。昨年の平成30年の英語が特異的に難しかったようです。社会と理科は例年並み難易度の問題ですが、説明する記述問題が減らされたので、易しくなった印象です。5教科全体では例年よりもかなり平均点は上がると思います。

 昨年の入試採点ミスにより、採点しにくい問題が大幅に減らされたようで、非常に解きやす問題になっています。

 

◎国語

 過去に例がないほど、容易な問題です。模擬試験(実力テスト)の問題よりも簡単だったと感じた方が多いと思います。大問1と大問2の長文問題で、類推して解くような問題がなく、本文にほとんど答えが書いてある状態の問題になっており、国語ができる方は非常に簡単に解けたと思います。大問3の古文もわかりやすく易しい問題だと思います。大問4の問2はできなかった人がほとんどいないのではないかと思います。作文はグラフから気づいたことを書くところは容易ですが、自分が経験した日本語の大切さを書くところはちょっとに難しかったかもしれません。それでも、平均点は例年(予想平均60点くらい)より10点以上は上がりそうです。

 さすがに来年以降は今年ほど易しくはないとは思いますが、記述問題はあまり変わらず、選択問題が難しくなると思います。

 

◎数学

 今年の数学は昨年よりも易しくなっています。また、出題された問題数は昨年とほぼ同じで、時間的にも昨年よりも余裕があったと思います。特に、大問2の文章題が基本的な問題で、解くのにあまり時間がかからなかったはずです。毎年ですが、大問3のグラフがかけたかが大きな点数の分かれ目となります。平均点は10点近く上がると思います。

 今年の数学の問題は、数学を努力して勉強した人が報われる非常に良い問題です。

 

 大問1の確率は教科書にある基本的な問題です。「もどさずに」の語句を見落とさずに樹形図がかければ、簡単に解けます。四角すいの高さを求める問題は、MとHを結んで△OHMで三平方の定理から求めるだけの問題で、三平方の定理の基本がわかっていれば簡単に解けたはずです。例年、大問1にある作図は、解答用紙の変更で、解答欄が手狭になっているので、大問2に変更になったようです。今後は大問2の方に作図が出ることになると思います。

 大問2は関数は(1)は基本の二次関数の変域を求めるだけでしたので、ほとんどの方ができたと思いますが、関数の(2)は大問2の中では最も難しい問題です。(1)の変域を求める際にかく対応表が点Aと点Bの座標になるので、そのうち、点Aの座標から、反比例の比例定数を求め、点Cの座標のy座標を求めます。その結果からBCの長さが9になることがわかります。次に△ACPと△ABPは高さが同じで、面積が△ABPの2倍が△ACPになるので、底辺の比がBP:CP=1:2となるのがわかります。よって、長さ9を3等分したうちの1つがBPの長さになるので、BPの長さが3となります。点Bのy座標8より3つ下に点Pがあるので、点Pのy座標は5となり、選択記号はウとなります。文章題は教科書の基本問題と同じタイプですが、3月の入館者数をxとyにおいて連立方程式をつくると、解いた解答が3月の人数になるので、4月の人数に計算し直しが必要です。尚、解答例の連立方程式の下の方の式ではなく、10%増を110%、2%減を98%にした式、1.1x+0.98y=7512でたてた式でも正解です。ただ、1.1x+0.98y=312は不正解です。今年も説明問題がでましたが、相対度数を求めて比較するだけですので、相対度数の求め方ができればほとんどの方が正解したと思います。最後の作図ですが、条件①のかき方がわかればできたと思いますが、線分ADの垂直二等分線をかいた方は間違いです。コンパスの針を点Aにさし、コンパスの幅をADにして円をかけばよいです。∠Bの二等分線をかいて、△ABCの外側で円と交わったところがPとなります。尚、点Aを中心にかいた円は、解答例のように完全な円にしなくても構いません。

 毎年ですが大問3のグラフがかけたか、かけなかったで点数が大きく変わったと思います。今年は平成21年度入試以来、10年ぶりに水そうの問題がでました。(1)は単純に表1からx=0のとき、y=0で、x=8のときはy=10になり、関数が2次関数ではなく比例になることに気づけば、x=4のとき、y=5になるとわかります。(2)のグラフですが、水面までの高さが14cmになると給水の割合が変わるので、ここでグラフが変わることがわかります。y=14となるのは、表2の2番目の式のyに14を代入してxを求めると、x=16となります。よって、(0,0),(8,10),(16,14) (22,20)に点をとり、直線で結べばグラフが完成します。グラフさえできれば、大問3の左側の問題は完答できたと思います。右側の2の問題は体積を求めないと解けない問題なので難しかったと思います。まず、図3のグラフからy=10になるのは毎秒200㎤では8秒かかるので、200×8=1600㎤の水が入ることになります。図4のグラフでは1600㎤の水を5秒で入れるので、毎秒320㎤の割合で水が入っていることがわかります。あとはy=10からy=20までの体積を求めると、x=8からx=16までの8秒間が毎秒200㎤で1600㎤、x=16からx=22までの6秒間が毎秒400㎤で2400㎤となり、合わせて4000㎤の水が入ることになります。4000÷320=12.5となり、はじめの5秒を加えて17.5秒が答えとなります。大問3はグラフがかければ、左側の問題がすべて解けますので、20点中16点はとれます。

 大問4の1の角度問題は、基礎的な問題で、解けないとまずいです。2の証明問題は、∠BAHと∠EFGが同位角だと気づかなければ、難しいかったもしれませんが、△BAH∽△BFHなどを使って証明しても問題ないので、結構できた方が多いと思います。

 3の面積を求める問題は今年最も難しい問題です。AとOを結ぶと四角形AOCBがひし形になることがわかります。そのため、△BOCが正三角形になり、△ABEが60°、30°の直角三角形になっていることがわかります。また、△ABE∽△FOEの相似比が1:2、△ABE∽△AHBの相似比が√3:1になっていることに気づき、その面積比から、△FOEが△ABEの面積の4分の1、△AHBが△ABEの面積の3分の1になることがわかります。あとは、△ABEの面積から△FOEと△AHBの面積を引けば、求める四角形BHFGの面積が求めらます。

 

 大問3の関数の利用ができなく、証明もできなくとも60点近くとれます。証明ができれば70点はとれた思います。今年は91点以上とれた方も結構いると思います。

 今年の数学は、大問1が基礎的な問題、大問2が基本的な問題、大問3と4が応用問題というような非常にバランスのとれた問題になりました。来年以降もこのような構成で問題が作成されると思われます。特に、数学は問題が少なく配点が高いので、大問1と大問2でいかにミスを無くすかが非常に重要です。また、数学で80点以上とるには大問3の関数の利用の左半分の問題と証明を完答することが必要です。

 

◎社会

 今年の社会は地理が標準的、歴史が難しく、公民は基本的な問題だったと思います。

 今年の地理は昨年出されなかった都道府県名を書く問題がまた出題されました。大問2の2の雨温図を選ぶ問題で選んだ理由ですが、解答例にある「冬でも気温が高く」の部分がなくとも、「夏の降水量(雨)が多い」だけでも正解になるはずです。また、5の二毛作の説明も「夏に米、冬に麦を栽培する方法」などでも正解になると思います。

 歴史の大問3は珍しく世界史の四大文明がでました。選択内容は簡単だったので、できた人は多いと思います。3の室町幕府の滅亡は選択肢ウとエで迷ったと思いますが、織田信長が安土城を作ったのは全国統一間近の時期なので、その前に滅亡していると考えれば、選択肢ウとなります。4の西まわり航路を行き来した船は北前船だけが正解です。書いた人が多いと思われる菱垣廻船や樽廻船は江戸と大坂を結ぶ航路を行き来した船で、この場合は不正解となります。5の正解の「国宝」は、文章中の「世界的にも」に引きずられて「世界遺産」と書いた人が結構いたと思います。残念ながら、まだ、縄文の女神も洛中洛外図屏風も世界遺産に指定されていません。

 大問4も1と2はちょっと難しかったかもしれません。1の(2)は選択肢がちょっと歴史が詳しくないと選べないような問題です。2は「鉄道を日本に渡す」という内容で書けば正解になると思います。5は歴史というよりは地理の問題ですが、基本的な問題ですので、できた人は多いはずです。毎年出ていた今年もグラフをかく問題が出ましたので、来年以降も出ると思います。

 公民は大問5の1の(2)の法律案の再可決に必要な数と大問6の1の(2)の株式会社の問題が以外は基本的な問題だと思います。

 H30年の世界地理に出ていた「アマゾンを開発するべきか、するべきでないか」など、毎年出ていた意見を書かせる問題が無くなりました。採点しにくいので、今後出題されないようです。

 社会は例年並みの平均点より若干高いかもしれません。

  

◎理科

 今年の理科は計算問題が難しかったと思いますが、それ以外は説明問題があまりないので、解きやすかったと思います。

 大問1の2の(2)の蒸散量の計算問題ですが、ふつうは蒸散の実験は水面に油を垂らして水面からの水の蒸発を防ぐのですが、この実験では水面からの蒸発量も含む問題です。対照実験としてガラス棒だけが入った三角フラスコが表にありますが、葉の部分から蒸散量を求めるには関係ありません。純粋に枝Bの蒸発量2.55gから枝Aの蒸発量0.45gを引いた2.1gが解答となります。枝Bと枝Aの三角フラスコからも水面から同じ量の水が蒸発しているので、ガラス棒の蒸発量0.20gは特に使いません。そのため、間違った人が多いかもしれません。

 大問3の4の地層の分布ですが、A地点の柱状図から、選択肢がアとウに絞られます。次に、D地点の柱状図からアが正解となります。このような問題は丁寧に違いを探すことが重要です。

 大問4の2の(2)の月の位置の問題は、7月26日が満月でウの位置になるので、7月24日は満月になる前のイが正解になります。この問題を理解していれば、大問4は完答できたかもしてません。 

 大問5の1の質量パーセント濃度の計算問題は基本的ですが、水と食塩を合わせた水溶液の質量120gで割っていないと正解の16.7%になりません。水の100gだけで割って20%とした人もいると思います。電池は教科書にある銅と亜鉛の電池とは異なり、木炭とアルミニウムの電池で、ちょっと戸惑ったかもしれません。2の(1)のアルミニウムが放出した電子の数は、アルミニウムイオンが3+になっているので、電子3個分失っているのがわかるので、正解は3となります。(2)は電子を放出する方がー極になるので、アルミニウムがー極で、+極になるのは木炭になることがわかり、充電できる二次電池ではないので、正解はウとなります。

 大問6の2は鉄と硫黄の質量を足した値をグラフにする問題で、あまりなじみのない問題でかけなかった人もいたかもしれません。

 大問7の2の(2)の計算問題が今年理科で一番難しかった問題です。C地点の運動エネルギーはA地点の位置エネルギーと同じになるので、そのエネルギーを40xとすると、B地点ではC地点より30cm低くなっているので、低くなった分が運動エネルギーとなり、そのエネルギーは30xと表せます。よって、40x÷30x=1.33=1.3倍となります。

 大問8の1の(1)のbの計算問題ですが、1回の振動にかかる時間が0.005秒になるので、振動数は1秒を0.005秒で割った値の200Hzとなり、正解はイとなります。

 理科の平均点は例年並みと思います。

 3月13日(水)19:50に訂正しました。「大問3の4の解答はウではなく、アです。」

 

◎英語

 今年の英語は、昨年はもとより、2年前のH29年の入試より易しかったと思います。

 

 大問2の1は元に戻り、例年通り、教科書の太文字の単語が正答になる問題でした。(1)は「私は子供の日に生まれた」でbornが正解ですが、思いつかなかった人も多いと思います。(2)の問題がちょっとした計算問題になっています。それぞれのクラス40人で25クラスあるので、40×25=1000人が解答になり、thousandです。(3)のhoursの複数形のsをつけ忘れると不正解です。2の会話文も、例年通りに戻り、易しい問題です。3の並び替えの問題は昨年より易しかったように思われますが、大問2全体ではできた人が多いと思います。

 大問3は2のZは文中に100人中42人がインターネットが使えないとあるので、逆の58人が使えるということになります。このような単純な計算問題が昨年からの傾向として、今後も出題されると思います。1と3も易しかったと思います。全体としては、昨年の問題のように時間がかかる問題ではなかったので、大問4をする時間を十分とれたと思います。

 大問4は例年に比べて、比較の文が多いですが、読みやすい長文だと思います。教科書になく、注釈にない単語は1つだげcloserがありましたが、問題に関係ないので、問題なかったはずです。ちなみに、closeは教科書では「閉じる」という動詞の意味がありますが、「すぐ近くに」という副詞の意味もあります。closerはその比較級です。come closer toで「より近づいてくる」という意味になります。6のII以外は長文が読めた人はできたと思います。

 大問5の自由英作文の問題も今年も出ました。採点がしにくいので、一部変更になるかと思いましたが、そのままでした。選択問題ではなくなったので、設問の英文が易しく、書きやすい内容だったので、できた人は多いと思います。

 平均点も例年(昨年を除き、ここ数年は予想平均60点)比べても5点程度は上がると思います。

 

☆ボーダーラインの変更

  国語の問題が易しすぎたので、全体のボーダーラインが10点程度上昇すると思います。

 また、予想ボーダーラインが350点以上の高校の場合(米沢興譲館の探究科や長井の探究cなど)は20点程度、予想ボーダーラインが400点に近い(山形東の探究科の場合)は30点程度上昇する可能性があります。今回は高得点をとれる人ほど点数が高くなりますので、もともとボーダーラインが高い学校ほど、上昇するはずです。

 尚、定員割れの場合は、国語の点数が良いので、不合格になる人はほぼいないと思います。定員割れで成績で不合格にされるケースは内申点が18以下と入試の合計点数が100点以下と非常に悪く、特に、入試の国語の点数が20点を下回るような場合になります。今年は国語が易しいのでさすがに20点を下回る人はいないと思います。