令和2年度山形県公立高校入試問題難易度

◎令和2年度の山形県公立高校の入試問題についての雑感

 今年の入試問題は国語、数学は例年並みに難しくなり、理科が例年より若干難しく、社会は例年より若干易しく、英語は昨年より易しいと思います。やはり、昨年の平成31年の国語が異常に易しかっただけのようです。今年はボーダーラインの変更はありません。

 

◎国語

 大問1は本文から心情を類推する部分が多く難しかったと思います。大問2は比較的本文から解答を探しやすい問題になっていますので、易しかった方だと思います。大問3の古文もわかりやすく易しい問題だと思います。大問4の問1の漢字も例年並み、漢文も易しい方です。ただ、作文はAとBの二つの言葉の両方について、書かなければならないところを、AとBのどちらか一方だけを書いた人が多いのではないかと思います。一方しか書いていない方は、減点されますので、作文は例年より点数が下がると思います。そのため、全体的には昨年を除く、例年並みの平均点になると思います。

 

◎数学

 今年の数学は昨年よりも難しくなり、例年並みの問題になっています。出題された問題数は昨年と同じですが、問題内容を把握するのに時間がかかる問題が多かったので、例年並みに時間が足りなくなる問題だったと思います。ただ、大問2の説明問題をはじめから捨てていた方は、時間的には足りたはずです。毎年ですが、大問3のグラフがかけたかが大きな点数の分かれ目となります。平均点は例年並みで、昨年に比べると10点近く下がると思います。

 

 大問1では、平成27年以降出題されていた因数分解を利用した式の値の求め方の問題がなくなりました。ただ、因数分解は大問2の説明問題で使いますので、因数分解の問題はなくなっていません。来年度以降はまた因数分解を利用した式の値の求め方が出題される可能性が高いです。確率はCの箱の個数が3個なので、普通(2個)より樹形図が複雑になりますが、確率ができる方はできたと思います。側面のおうぎ型の形を選ぶ問題ですが、側面のおうぎ形の中心角の求め方を知っていれば、中心角が180°になるので、正答のウを選ぶのは簡単だったと思いますが、中心角の求め方を知らなかった方は難しかったと思います。資料の問題は丁寧に確認していけば、できたと思いますが、若干時間がかかる問題です

 大問2の関数は(1)は反比例の変化の割合を求める問題で、変化の割合=yの増加量÷xの増加量で計算するしかない問題です。yの増加量が9減少するので、変化の割合が-3と負の数にするのを間違えた方がいたと思います。関数の(2)はx=3をy=12/xに代入して、yの値を求め、点Aの座標を出して、y=ax^2に代入しaの値を求め、x=-6を代入して、点Bの座標を求めて、三平方の定理を使ってA、B間の距離を求めます。複雑ですが、座標の出し方は定番のやり方なので、できた方はそれなりにいたと思います。関数は珍しく(1)より(2)の方が正答率が良いかもしれません。毎年恒例となりました説明問題ですが、平成19年以来12年ぶりに文字式を使った説明問題が出ました。どうやっていいかわからなかった人が多いと思います。この問題で悩んで時間をかけた人は最後の証明までたどり着けなかったのではないかと思います。この問題では4桁の数を文字であらわす必要がありますが、3桁の数を文字であらわす問題を解いたことがある人であれば、できたかもしれません。千の位の数は1000倍、百の位の数は100倍、十の位の数は10倍して、一の位をすべて足した式を書くと1000a+100b+10a+bとなり、1010a+101b=101(10a+b)に変形できます。ここで共通因数を使った因数分解が使われています。101(10a+b)に変形できていれば、正解扱いとなると思います。文章題は中1でやった一次方程式の過不足の問題と同じタイプですが、人数をx人として式を作らないと式が立て難い問題となります。最初に持っていた金額をy円として連立方程式を立ててもよいです。基本的な文章題でしたので、大問2ではこの問題が一番易しかったと思います。作図は、点Aで直線lと接し、かつ2点B、Cを通る円の中心を作図すると勘違いした方が多かったかもしれません。この条件を満たす円は描けません。この問題は、点Aで直線lと接する円と別の2点B、Cを通る円の中心だけが同じになる点を描くので、点Aから垂線を引き、線分BCの垂直二等分線を引いて、2つの線の交点が求める点Pとなります。作図も悩むと時間がかかった問題です。作図の問題は設問が勘違いしやすく良い問題ではありません。

 毎年ですが大問3のグラフがかけたか、かけなかったで点数が大きく変わったと思います。今年はまた図形が重なるタイプの動点問題でした。図形が重なるタイプの問題にしてはわかりやすい問題だと思います。(1)は単純に表1からx=0のとき、y=0で、x=4のときはy=16になり、関数が2次関数になることに気づけば、x=3のとき、y=9になるとわかります。(2)のグラフですが、PQが6cmでx=6を超えると、重なる面積が減少することに気がつけば、(ア)が6となるのがわかります。表2から、xが0~4の間はy=x^2の放物線のグラフで、4~6の間は(4,16),(6,16)を直線で結び、6~10の間は(6,16) (10,0)を直線で結べばグラフが完成します。グラフさえできれば、大問3の左側の問題は完答できたと思います。右側の2の問題は今年2番目に難しい問題です。△APQの面積をxを使って表すと、6×(10-x)÷2=3(10-x)=30-3xと表せます。この式と表2の式のyに代入して方程式を作り、解きます。30-3x=x^2→x^2+3x-30=0は因数分解できませんので、解の公式で解くと、x=(-3±√129)/2という変な値になりますが、このうち、x=(-3+√129)/2の方は値が正になるので、可能性があるのですが、この値は4を超えるので、xの変域にあてはまりません。次に30-3x=16を解くと正答のx=14/3が出ます。ちなみに30-3x=-4x+40を解くと、x=10となり、直線mが辺PQと重なる場合なので、あてはまりません。x=(-3+√129)/2の方は変だと思って、x=14/3だけを書いた方は正解したかもしれません。大問3はグラフがかければ、左側の問題がすべて解けますので、20点中16点はとれます。

 大問4の1の証明問題は、弧AFの円周角で∠ACG=∠ABDとなり、仮定よりAB=ADで△ABDが二等辺三角形で底角が等しいので∠ADE=∠ABD、よって、∠ACG=∠ADEになることを書ければ、満点だった人が多いと思います。この証明問題の難易度は入試の証明問題の基本的なレベルです

数学で高得点をとるには必ず完答できないとまずいです。2の(1)は1で証明したので、AC=ADだからAC=6cmとなります。ここで、△AED∽△CEBの相似比はAD:CB=6:3=2:1となります。よって、AE:CE=2:1となります。AE:AC=AE:(AE+CE)=2:(2+1)=2:3となるから、AE:6=2:3の比例式からAE=4cmを導きます。今年も、最後の問題の2の(2)の面積比を求める問題が最も難しい問題です。2の(1)からAE=4cmなのでCE=2cm、よってDE=2cmとなります。

したがって、△GFD∽△CFBの相似比が2:3となり、△DGFと△BCFの面積比は、4:9となります。△DGFの面積を4xとすると、△BCFの面積を9xと表されます。ここで、△DGF≡△CEFだから△CEFの面積も4xと表されます。△CBE=△BCF-△CEF=9x-4x=5xとなります。AE:CE=2:1で、△ABEとCBEは高さが等しい三角形なので、底辺の比が面積比となるので、△ABEの面積はCBEの面積の2倍になるから、10xと表せます。よって、△ABE:△CEF=10x4x=5:2となります。この問題をまともに解けた方はほとんどいないと思います。

 

 大問3の関数の利用ができなく、証明もできなかった場合40点が限界です。大問3の関数の利用の左半分と証明ができれば60点以上はとれた思います。今年は91点以上とれた方はほとんどいないと思います。

 

◎社会

 今年の社会は歴史が標準的で、地理と公民は基本的な問題だったと思います。

 今年の世界地理は、大問1の1で対せき点(地球の裏側の地点)の問題と5のアメリカの綿花栽培の気候の特徴の問題が若干難しい程度で、6の(2)を除くと、基本的な知識問題です。大問1の1で対せき点の問題は日本の地球の裏側がブラジル沖になるのを知っていればX地点がより東にずれていることから、エより東のイを選べば良いことがわかります。あとは、その地点の緯度と経度を読み取ると正答となります。また、対せき点の出し方を知っていれば、そちらから緯度と経度を求めて、記号を選んでもよいです。ちなみに、対せき点の出し方は、緯度は北緯と南緯を入れ替えて、緯度の値は変えず、経度は西経と東経を入れ替えて、180度から経度の値を引いたところになります。今回の場合は北緯30度、東経165度なので、南緯30度、西経15度となります。アメリカの綿花栽培の気候の特徴は、気温と降水量の2つについて書いていないと満点になりません。どちらか片方だけだと部分点1点となると思います。6の(2)は社会ではよく問われる実数と割合の違いをそのまま出した問題です。この問題ならできた人が多いと思います。日本地理は大問2の3の地形図が出ましたが、基本的な問題なので、できた人が多いと思います。大問2の4は地理では一番難しい問題だったと思います。「季節風が山にさえぎられる」とう内容が書いていないと正答になりません。大問2の5の滋賀県を選ぶ問題も若干難しいと思います。果実の出荷額が多いので、アが山梨県、面積が小さいので、イが香川県、残りのウとエで、果物を作っていない方(面積の小さい方)が滋賀県なので、ウが正答となります。茨城県も果物のイメージがないので、わかりにくいかと思います。大問2の6は若干答えにくかったかと思いますが、「来てもらう」という内容であれば、正答になると思います。

 歴史は、大問3の4と、大問4の5以外は基本的な問題です。ただ、大問3の3の南北朝時代もできなかったかもしれません。大問3の4は貞永式目(御成敗式目)の内容を書く問題で、書けなかった人が多いのではないかと思います。「裁判の基準」という内容であれば、点数がつくと思います。大問4の5はアジア・アフリカ会議がサンフランシスコ平和条約の前後どちらかで迷った方が多いのではないかと思います。サンフランシスコ平和条約の後にアジア・アフリカ会議が開かれたのでウ→イ→エ→アが正答となります。今年の歴史は例年より点数がとれた方が多いと思います。

 公民は大問5の3の(2)の金融政策の問題が以外は基本的な問題で、公民をちゃんとやっていた人はだいたいできたのではないかと思います。

 毎年出ていたグラフをかく問題が今年は出ませんでした。今後はグラフをかく問題は出たり、出なかったりすることになるのか、来年以降に入試を見ないとわかりません。

 社会は例年の平均点より高くなると思います。

  

◎理科

 今年の理科は昨年から導入された選択肢が6つの6択問題が多く出題され、4択問題が減ったのが特徴です。そのため、内容理解していないと選択で迷うことなり、難しくなったと思います。

 大問1の3の(1)が生物分野では一番書きにくかったと思います。「微生物が死んだ」や「殺菌された」という内容であれば正答となります。大問1の3の(2)の選択肢で呼吸と消化で迷ったと思います。酸素と有機物を使ってエネルギーを取り出すことを細胞による呼吸といいます。そのため、エが正答となります。大問2の2の心臓の仕組みを覚えていないと答えられなかったと思います。

 大問3の1の天気記号の問題ですが、雲量7は晴れであること覚えていないと選べません。大問3の2の日本の上空をふく風は季節風ではなく、偏西風です。日本付近は、地表付近が季節風で、上空が偏西風です。季節風と書いた方が結構いたと思います。大問3の3は「水蒸気を含む」という内容であれば正答となります。大問4は5以外は基本的な問題です。大問4の5は、7月がいて座、8月がやぎ座、9月は?と来るので、みずがめ座とした方が多かったのではないかと思いますが、9月に地球から太陽のある方向にある星座を答えるので、しし座となります。この問題はできなかった人が多いと思います。

 大問5の2は計算式を書かせる問題が出題されました。正答例の分数の式ではなく、60÷54.5としても大丈夫です。計算が間違っても、式が当たっていれば部分点がつくと思います。大問5の3の(2)は難しかったと思います。固体が出てくるのはミョウバンで、出てくる質量を出すのが難しいです。この実験では水50gの10gのミョウバンを溶かしています。表に書いてあるミョウバンの質量は水100gに溶ける場合ですので、水50gでは半分の質量しか溶けません。よって、20℃で水50gに溶けるミョウバンの最大の質量は5.7gとなり、溶かした質量10gから5.7gを引いた4.3gが答えとなります。したがって、エが正答です。この問題も、迷った方が多かったのではないかと思います。大問6の2の発熱反応の利点を書く問題は書きにくかったと思います。「どこでもあたためられる。」などでもよいはずです。

 大問7の電気回路の問題は、3のグラフを間違えた方が多いのではないかと思います。グラフにかくのは抵抗器Aの電圧と電流の関係なので、抵抗器Aの抵抗は20Ωなので、オームの法則から2Vのとき、0.1Aすなわち100mAの電流が流れることがわかります。そのため、原点と点(2,100)を結ぶ比例のグラフをかけば正答となります。直列回路の実験結果である表の値をそのまま書いた人が多かったのではないかと思います。4の並列回路にしたときの抵抗器Bの電力を求める問題は並列回路では電圧は一定なので、30Ωに6Vがかかります。オームの法則から電流は0.2Aと求められますので、電力は6V×0.2A=1.2Wとなります。4の問題は電気回路を理解している人はできたと思いますが、電気回路ができない人が多いので、正解者は少ないと思います。

 大問8の2の(1)はオとカで迷った人が多かったと思いますが、グラフ2から、ばねの伸びが小さいおもりAの方が浮力が大きいので、体積が大きいほど、浮力は大きくなるので、おもりAの方が体積が大きく、おもりBの方が体積が小さいことがわかります。よって、カが正答となります。2の(2)が今年の理科で最も難しい問題だったと思います。おもりAがすべて水に入るとばねの伸びが6cm短くなるので、ばねの伸び6cm分の力が浮力となります。このばねはグラフ1から質量10gのおもり5個で8cm伸びるので8cmのばすのに0.5Nの力が必要です。よって、8:6=0.5:xの比例式を立てて、解くとx=0.375となり、小数第2位を四捨五入して小数第1位まで求めると0.4Nとなります。グラフ2の見方がわからないとできない問題なので、できなかった人が多かったかもしれません。

 問題をしっかり読んでいないと、勘違いする問題が結構あったと思います。理科の平均点は例年より低くなると思います。

 

◎英語

 今年の英語は、昨年より易しかったと思います。

 

 大問2の3の並び替えの問題が記号で答える問題になりました。このような問題は必ず空欄の下に単語を書いてから文が正しいかどうか確認してから、記号を書かないと間違えやすいです。今後の並び替えの問題が記号で答える問題になりますので、実力テストの形式もこのような形式に変更されるはずです。

 大問2の1は(3)のJanuaryのスペルが書ければ完答できた人は多いはずです。2の対話文も簡単だったと思います。3は形式は変わりましたが、(1)がthatを使った関係代名詞で、(2)はDon't beの命令形の文だとわかればできたと思います。大問2は例年になく当たった方が多いと思います。

 大問3は特に難しい内容はなく、英文が読めた方は簡単だったのではないかと思います。

 大問4も教科書にない単語が一つもなく、非常に読みやす内容で、設問も6以外は簡単だったと思います。長文が読めた人はできたと思います。

 大問5の自由英作文の問題も好きな教科について書くだけで、書きやすかったのではないかと思います。

 平均点もリスニングの出来し次第では、昨年の平均点よりも高くなると思います。

 

 

  国語・数学・理科で点数が低くなり、社会と英語で高くなり、全体としては、例年並みより若干高い程度だと思います。