令和3年度山形県公立高校入試問題難易度

◎令和3年度の山形県公立高校の入試問題についての雑感

 今年の入試問題は国語が昨年より若干易しく、数学は昨年より難しく、社会は過去最高に易しく、理科は例年並み、英語が昨年より若干難しかったと思います。全体では例年並みと思いますが、社会のできた人が多ければ、若干合計の平均点数が上がるかもしれません。

 

◎国語

 大問1は比較的にわかりやすい問題だと思います。大問2は問7だけ完答できた人が少ないと思いますが、それ以外は解けた方が多いと思います。大問3の古文も例年並みの易しい問題だと思います。大問4の問1の漢字も例年並み、改善点を選ぶのもできた人が多いと思います。特に作文は、とても書きやすい題材でしたので、例年より点数が上がると思います。そのため、全体的には昨年より平均点は上がると思います。

 

◎数学

 今年の数学は昨年よりもさらに難しい問題になっています。大問2が完答できる問題が少ないと思います。大問3は時速を分速に直すか、分を時間に直さないと解けない問題なので、できなかった人が多いのではないかと思います。グラフがかけた人は比較的簡単に感じられたと思います。平均点は昨年より下がると思います。

 

 大問1では、昨年同様形式でした。三角柱の体積を求める問題は三平方の定理の1:2:√3の比から底面の三角形の残り2辺の長さを求めて計算すれば解ける問題でできた方が多いと思います。確率の問題も、それぞれ樹形図を作って確率を求めれば、3つとも同じ確率であることがわかるので簡単な方でした。最後の直線と平面の位置関係は(イ)と(エ)で迷ったかもしれません。(イ)の場合はねじれの位置になる場合があるので、(エ)となり正解です。最後の問題以外はあまり悩まずにできたのではないかと思います。

 大問2の関数の応用問題は(1)は2次関数のyの変域を求める基礎的な問題で、この問題だけは絶対当てなければいけません。関数の(2)はまず点Aのx座標を2次関数の式に代入しy座標を求めます。次に反比例のグラフの式を求め、点Bの座標を求めます。線分APと線分BPの長さの和が最短になるのは点Aと点Bを直線で結ぶときで、最初に求めた2点の座標から直線ABの式を求め、その直線の式にy=0を代入しxの値を求めることで、x軸との交点Pのx座標が求められます。少々面倒な問題ですが、数学で点数をとらなければならない人はこの問題は落とせません。作図の問題は、条件1の∠Cの二等分線を引けた方は多いと思いますが、条件2の辺ABを直径とする円をかくことができた人があまりいないと思います。辺ABを直径とする円をかくことで、直径に対する円周角が90°になることを利用する問題でした。平成28年の入試問題の作図をやったことがある方は、同じタイプの問題でしたので、できた方がいたと思います。今年の文章題は難しかったと思います。里芋の個数をx個とすると式を立てるのが非常に難しいので、大きな袋の枚数x枚、小さな袋の枚数をy枚として連立方程式を立てるのがまだ簡単な方ですが、それでも難しいです。x+y=50の方は書いた人は多いと思いますが、8x+5y+67=10x+6(y-2)+2×5の式を作ることができなかった人が大半だと思います。この式は、中1でやった一次方程式の過不足の難しい方の問題を連立方程式にした問題です。さらに、この連立方程式を解いてxとyの値を求め、その値を8x+5y+67に代入すれば、里芋の個数が求められます。完答できた方はあまりいるとは思いません。資料の問題の説明問題ですが、平均値が同じと書いてあるので、中央値か最頻値のどちらかを使う問題ということはわかったと思います。中央値がともに5m以上6m未満の階級(この問題では正確な中央値は求められません。)にあるので、最頻値の違いで予想しているとわかります。そのため、「智也さんの最頻値が6.5m、公太さんの最頻値が5.5mで、智也さんの最頻値が大きいから。」という解答になります。尚、最頻値は階級値で表しますが、「智也さんの最頻値が5m以上6m未満の階級に、公太さんの最頻値が4m以上5m未満の階級にあるので、智也さんの最頻値が大きいから。」と階級で答えても正解になると思います。ただし、数値が当たっていないと不正解となるはずです。この資料の問題ですが、最頻値を使った説明問題は今までなかったので、画期的な問題だと思います。今後、問題集や実力テストで同様な問題が出題させると思います。

 今年もですが大問3のグラフがかけたか、かけなかったで数学の点数が9点違ってきます。グラフがかけなかった人は最初の問1の(1)と(2)のアの6点しかとれません。グラフがかけた人は15点取れた人が多いと思います。グラフをかくには、(2)のイの値を求めなければなりません。イの値を求めるには、公園から空港までの道のり12kmを時速40kmで何分かかるか計算すれば求められますが、これが求められなかった人が多いはずです。12÷40×60=18(分)と求めれば、イの値が36となり、グラフがかけます。この計算は小学校ではやっていますが、中学の数学ではほとんどでてきません。どちらかと言えば、中3の理科の運動の最初の方でやっていますが、たくさん練習している問題ではないので、できない人が多い問題です。問2の方ですが、これはグラフがかけたとしても解ける人がほとんどいなかったのではないかと思います。エの値の求め方は、バスが午前10時6分に出発し、自動車が公園で止まっている間に追いこすので、午前10時18分までに公園を通過しなければなりません。そのため、12分で6kmを進ので6÷12×60=30(km/時)となります。オの値の求め方は、バスが午前10時6分に出発し、自動車が午前10時36分に空港に着くまでに空港についてはいけないので、バスと自動車が同時に空港に着いたと仮定して、30分で18kmを進むので、18÷30×60=36(km/時)となり、この速さでは同時に空港に着くので、この速さより遅いということになります。この問題が今年数学で最も難しかった問題だと思います。

 大問4の1の角度を求める問題はできた人が多いと思います。DE//ABで錯角が等しいので、∠ABC=∠BGE=40°となり、弧ACに対する円周角と中心角の関係から∠AOC=2∠ABC=80°となります。証明問題は円の半径に着目し、△OBCと△ODEがともに二等辺三角形になること、問題文から四角形DOBGが平行四辺形になっていることに気づくことができれば、完答できたと思います。しかし、解く時間がなかった人が多かったのではないかと思います。最後の問題は解く時間が無かった人か最初からあきらめた人が大半だと思いますが、最後の問題にしては解きやすい方の問題です。解き方は、△CFG∽△OFDはわかると思いますが、△OFD∽△EODになっていることに気づければ、OFの長さを求めることができます。OF:EO=DO:DE=4:6=2:3よりOF:4=2:3の比例式からOF=8/3が出ます。CF=OC-OF=4-8/3=4/3となります。よって、△CFG∽△EODで相似比が4/3:4=4:12=1:3となり、面積比が1:9となります。ここで、△EODの面積を求めるため、点Oから辺DEに垂線をひき、△EODが二等辺三角形であることを利用して、三平方の定理で△EODの高さを求めると√7となります。△EODの面積は6×√7÷2=3√7となり、あとは先ほどの面積比から△CFGの面積は√7/3が求められます。文章題と関数の利用の問題で悩まなければ、時間に余裕ができて解けたかもしれません。

 

 今年は大問1の最後の問題、大問2の作図、文章題、大問3の関数の利用の右側の問題、大問4の最後の問題が解けていない場合で70点となります。そのため、大問3のグラフがかけない、大問4の証明が完答できないと、50点ギリギリになってしまいます。それ以外で1問でも間違うと50点以下になりますから、50点とれていれば良い方の問題です。文章題が完答していないと80点以上はかなり厳しいです。そのため、今年は90点以上とれた方はほとんどいないと思います。

 

◎社会

 今年の社会は地理、歴史、公民がすべて基本的な問題だったと思います。20年以上過去問を見ていますが、ここまで悩む問題がなかったのは初めてです。実力テストより易しかったはずです。

 今年の世界地理は、大問1の5の(1)と6の資料問題以外は、基本的な知識問題です。社会の得意な方は完答できていると思います。大問1の5の(1)は2017年の工業製品(機械類・衣類・自動車)の項目のパーセントをたすと10%を超えているのがすぐにわかりますので、正解の(イ)はほとんどの方ができたと思います。6の資料問題も、フランスを選ぶ問題ですが、フランスとニュージーランドは先進国なので、自動車の保有台数が多いと考えます。ニュージーランドは羊が多いと考えれば、正解の(ア)となります。日本地理は大問2の4の説明問題で、2011年から取扱貨物量が大幅に増えていることを自動車道路の全線開通年と比べれば、「北関東自動車道が全線開通したから。」と答えられたと思います。尚、「高速道路が整備された。」など、北関東自動車道を書かなければ減点になるはずですが、部分点はつくはずです。大問2の7の群馬県を選ぶ問題ですが、人口が多いのは兵庫県の(ア)、果実の産出額が多いのは愛媛県の(エ)とわかり、岩手県は面積が広いと知っていれば、残った(イ)が群馬県とわかるはずです。地理の問題が得意な方は35点完答した人が多いと思います。

 例年、歴史は細かな内容と問う問題があり、なかなか完答できる方はいないのですが、大問3の1の(2)を除けば、完答できた人が結構いたのではないかと思います。大問3の1の(2)は古墳時代に渡来人がもたらしたものは何かを選ぶ問題です。(ア)の火薬を選んだ人はほとんどいないと思いますが、(イ)の稲作と(ウ)の青銅器が弥生時代だと覚えていれば、(エ)の機織の技術を選べば良いとわかります。この問題が今年社会で一番迷った問題だと思います。尚、(1)の「埴輪」はひらがなで「はにわ」と書いても大丈夫です。基本的に「漢字で書きなさい。」と指定されていない問題はひらがなで書いても問題ありません。逆に漢字を間違えていれば不正解です。大問3の4の(2)は「藩の蔵屋敷」と書いていれば正解です。「くらやしき」と書いても問題ありませんが、「藩」の語句を書いていなければ不正解です。大問4の1は漢字4文字指定でしたので、「文明開化」と書かなければなりません。「化」を「花」にしていなければ大丈夫だったと思います。大問4の4の有権者の数が増えた理由は年齢と性別について書かなければなりませんから「20歳以上の男女」という内容であれば正解です。年齢を書かず「女性にも与えられた」という内容では減点されます。尚、「18歳以上の男女」では年齢が間違っていますので、不正解となります。大問4では5の京都議定書が若干難しかったくらいです。例年、出題された出来事の並び替え問題がないので、歴史が得意な方はほぼ完答できたのではないかと思います。

 公民は大問5の2の(3)の法テラスの役割を選択する問題以外は見たことのある問題だと思います。法テラスの問題もできた人が大半ではないかと思いますので、公民の完答者も多いと思います。

 毎年出ていたグラフをかく問題が今年も出ませんでした。やはり採点が大変だと思いますので、もう出題されないようです。歴史の出来事の並び替え問題は来年以降再び出題させるのではないかと思います。ただし、4つの中から正しい順のものを選べのような問題になると思います。また、漢字指定問題が増えています。

 今年の社会は社会の得意な方は90点以上になった方が多数いたと思います。それほど社会が得意でない人も実力テストより点数が取れていると思います。尚、社会は嫌いな人は全くできないので、平均点はそれほどあがらないかもしれません。

  

◎理科

 今年の理科は生物以外は変わった問題はなかったように思います。計算問題はやはり難しいので、例年並みの問題だと思います。

 大問1の2の(2)の精細胞の個数を書く問題ですが、知っていて書いた人はほとんどいないと思います。教科書をよく見ていれば2個あることがわかりますが、文章による記述はありません。普段から教科書を隅々まで見ているか、理科の先生に言われていなければ書けない問題です。山形県の県立高校入試では生物分野だけは、たまにこのような非常に細かいところを問う問題が出ます。大問2の1の(1)の水性生物の問題ですが、せめて水性生物の名前があれば、解けたかもしれませんが、まともに解けた方はほとんどいないのではないかと思います。大問2の1の(2)は「在来種が減り、生態系のつり合いがとれなくなる。」などでも正解となります。特に大問2の1の内容は中学3年生の理科の教科書の最後の方にありますので、ほとんど読んだだけで授業が終わっている分野ですから、できかなった人が多いと思います。これら以外は基本的な問題でしたので、25点中16点とれればよい方だと思います。

 大問3の天気の問題は難しい方の問題です。大問3の1の(2)の露点を求める問題ですが、25℃の飽和水蒸気量がグラフから23gと読めます。この時の湿度が43.3%とですので、この空気1m^3当たりの水蒸気量は23×0.433=9.959となり、約10gとなることがわかります。10gの飽和水蒸気量になるのはグラフから11℃と読めますので、正解は(ウ)となります。1の(3)は気温が同じ25℃で露点が低くなっているので、空気中に含む水蒸気の量が減っていることがわかります。大問3の2は図の数値から計算で求められます。まずdの値は、海への降水78と流水8を足して86となります。eの値は、陸地への降水22から流水8を引いた14となり、大気を動かしているエネルギーは太陽であることは知っているはずですから、正解は(オ)となります。大問3の1の(1)の露点以外は難しかったと思います。

 大問4の地層の問題は易しかったと思います。大問4の2は火成岩以外を選べば良いので(エ)の泥岩が正解です。3の白っぽい鉱物は(カ)の長石が正解で、石英の場合は無色透明の鉱物と書いてあるはずです。花こう岩は深成岩と知っていれば、「地下深くでゆっくりと冷える」と書けるはずです。

大問4は覚えていれば、簡単だった問題です。

 大問5の銅の酸化還元の問題は2の(3)の問題だけ、間違いやすかったかなと思います。大問5の2の(3)は0.30gの方はわかった人が大半だと思いますは、発生する気体の質量で間違った人がいたと思います。炭素粉末0.15gのとき、残った固体の質量がグラフから3.60gとわかります。4.00gの酸化銅の粉末を入れてありますので、その差0.40gが反応で減った質量だとわかります。それで、解答を(ア)にすると不正解です。0.40gの質量は酸化銅の酸素の質量だけで、発生する気体が二酸化炭素なので、一緒に混ぜた炭素粉末の質量0.15gを合わせた0.55gが発生した気体の質量になります。よって、正解は(イ)となります。この問題以外は化学ができる人にとってはできたと思います。

 大問6の塩酸の電気分解は大問6の2のひっかけ問題にひっかかった人がいると思います。電流がながれるものを選ぶ問題ですが、(エ)の食塩を選んだ人がいたと思います。食塩は固体では電流はながれません。水に溶かして食塩水にすれば電流が流れます。そのため、(イ)と(オ)の2つだけが正解です。この問題以外はできたのではないかと思います。

 大問7の光の問題は、できた人が多いと思います。1の(2)の入射角と屈折角の関係を選ぶ問題は、必ず空気側の角度が大きくなるので、この場合は水中から空気側に出る光なので、屈折角の方が大きくなる(ウ)が正解です。2の虫眼鏡で見える像は虚像なので、物体を凸レンズと焦点の間に入れる必要があります。これらの問題も基本的な問題なので、できたと思います。

 大問8の運動の問題は少し難しかったかもしれません。2の(1)は基準点を間違えなければ、(イ)を選んで正解したと思います。2の(2)は台車の平均の速さの変化量が問われました。区間Cに比べ、区間Dでは1.4cmだけ長くなっていますので、1秒で50回の打点タイマーをつかっていますので、5打点では0.1秒かかっているとわかります。1.4÷0.1=14(cm/s)と求められます。最後の3の問題は(カ)を選んで間違った方が多いと思います。区間HとI、区間IとJではそれぞれ2.6cm長くなっていますが、区間JとKでは2.2cmしか長くなっていないので、途中で加わる力が小さくなったことがわかります。よって、区間Kでおもりが床についたと判断します。したがって、正解は(オ)となります。

 今年の理科の平均点は昨年より高く、例年並みになると思います。

 

◎英語

 今年の英語は、昨年より難しい単語がありました。また、英作文の題材が書きにくかったと思うます。そのため、昨年より若干難しかったと思います。

 

 大問1のリスニングの最後の聞き取り問題ですが、several(いくつかの)のスペルを書けなかった人が多いと思いますが、このスペルを間違っただけでは1点減だけで済むはずです。kindsのsをつけなかった場合も減点されますが、部分点はつくと思います。

 大問2の1の(1)のseasonsのsを書かないと不正解になると思います。(3)のdaughterはスペルが間違うと不正解です。2の対話文の(2)は若干難しかったかもしれません。3の並び替えの問題の(2)は難しかったと思います。withoutを使った文を書いたことはあまりないと思いますので、正答率は低くなると思います。

 今年の大問3は難しかったと思います。1のXはtemple(寺)の単語の意味を知らないと書けませんから、英語が苦手な方はできなかったと思います。Zは解答例の「生活様式」だけでなく、そのままway of lifeを直訳して「生活の方法」と答えても正解になるはずです。3の内容に合うものを選ぶ問題ですが、オは選べたと思いますが、アとイで迷ったのではないかと思うます。アのknowsを「知っている」と訳さずに「わかっている」と訳すとできたのではないかと思います。大問3に時間をかけた人は、時間が足りなかったかもしれません。

 大問4は昨年同様、非常に読みやす内容で、設問も6のII以外は簡単だったと思います。6のIIは「it's important for 人 to 動詞」の文にすればよいと気づければできたと思います。時間をかけて長文が読めた人はできたと思います。

 大問5の自由英作文の問題はnervous(ナーバス)な日本人の生徒に何をしたらよいかという問題で、書きにくかったと思います。時間が無かった人は書けなかったかもしれません。

 今年の英語の平均点は昨年よりも低くなると思います。来年から新しい教科書が変わります。英単語数が大幅に増えますので、令和4年以降の入試を受検する方は、なるべく早く対策をとってください。英語ができるようになるには時間がかかります。

 

 

  今年の入試は社会ができた人が、数学や英語でできなかった分の点数を補うことができた思います。